心理カウンセラーになるための資格に定義はなく、民間団体などが認定するさまざまな心理に関する資格が存在しているものの、「国家資格」はまったく存在していませんでした。
そのような状況から1988年に日本臨床心理士会が設立され、臨床心理士という資格が国内における最も信用度の高い心理学系の資格として長らく扱われてきました。
近年、学校や職場、医療現場など、さまざまな場面で心理学の専門家が求められるようになり、心理学の国家資格を求める声が上がるようになってきました。
その結果、2015年9月9日に「公認心理師法案」が国会で可決・成立し、2017年9月に施行されました。公認心理師の受験資格を得るためのカリキュラムも制定され、第一回公認心理師試験は2018年9月9日に行われました。
公認心理師の指定試験機関として一般財団法人日本心理研修センターが指定され、公認心理師試験の受験に必要な試験概要や出題基準が公表されています。
心理学に関する資格はたくさんあり、それらを幅広く定義したのが心理士という呼び名です。この中には臨床心理士ももちろん含まれます。資格では「師」を使う場合と「士」を使う場合があり、よく混同して間違って使われていることもあります。
これまで心理学の資格では「士」が使われていましたが、この公認心理師では「師」が使われるようになりました。公認心理師は国家資格であるため、その資格を有していないものが資格を持っていると誤解されるような名称を使用することができません。
公認心理師に「士」を使用してしまうと、これまで存在していた各種心理士の名称を使用できなくなってしまうことから、公認心理師には「師」が用いられています。
また、心理士と心理師では混乱を招くことが容易に予想できるため、冠に「公に認められた」資格であることを意味する「公認」の文字が付けられました。この考え方は会計士の国家資格である「公認会計士」と共通しています。
臨床心理士はこれまで国家資格ではないものの、心理学の最も信用度の高い資格としてその役目を果たしてきました。1988年に臨床心理士が誕生してから、30年間ほどで約35000人の臨床心理士が認定されています。
臨床心理士はその名の通り、臨床心理に特化した資格とされています。しかし、心理学には臨床心理学だけでなく、社会心理学、産業心理学、発達心理学、教育心理学などたくさんの分野があり、公認心理師は心理学に横断的な資格とされています。
また、臨床心理士の受験資格を得るためには第一種指定大学院や第二種指定大学院、専門職大学院を修了し、必要に応じた実務経験を積む必要がありますが、大学の学部については指定がありません。
一方、公認心理師の受験資格を得るためには公認心理師カリキュラムを採用している大学の学部、および大学院を修了する必要があります。
公認心理師の資格はできたばかりであり、これから次第にさまざまな現場に浸透していくようになります。公認心理師の活躍が期待できる職場は臨床心理士と同様、医療や教育、産業、福祉の現場が挙げられます。
これまでは心理分野の国家資格がなかったため、臨床心理士をはじめとするさまざまな心理士が心理カウンセラーとして活躍していましたが、国家資格ができたことで、今後は公認心理師の資格が就職する際に必要になってくると考えられます。
特に保険診療を行う医療分野では、これまで保険診療に必要な職種が「臨床心理技術者」となっていましたが、今後は「公認心理師」と明記される可能性があります。そうなれば、医療分野で就職するためには公認心理師の資格が必須となってきます。
この流れは医療分野に限らず、公的機関などでも同じです。スクールカウンセラーは必要人数が多いことからこれまで同様、臨床心理士の資格で働くことが可能と思われますが、今後も心理分野で仕事をする場合は公認心理師の資格を取らないデメリットの方が大きいと言わざるを得ません。
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