現代社会は教育現場や職場での人間関係のストレスや悩みなどを抱えている人が数多くいます。そのため、教育機関や職場にカウンセリングの専門家を配置する事が必要不可欠となっています。
また、カウンセラーとして独立していなくても、人と関わる職業には仕事の中でカウンセリングがつきものです。例えば警察官は加害者の身の上の相談を受けたり、被害者の苦しみに直面したりします。福祉施設の職員は毎日接する施設利用者との対話でカウンセリングが必要とされたりします。
また、企業の人事担当者がカウンセリングを学ぶことで、社内の対人関係を円滑にしたり、社員の能力開発の相談に応じる事もあります。地域の生活相談を担当する公務員にもカウンセラーとしての仕事が求められます。
このように、独立してカウンセリング業務を行うカウンセラーはまだ少ないのですが、カウンセリングを仕事に生かせる職場はとても多いといえます。
心理カウンセラーと関連の深い医療分野というと、やはり精神科や心療内科があります。医療分野で働くカウンセラーは心理士や心理療法士などと呼ばれる事もあり、医師と連携してカウンセリング(心理療法)や心理テストを行います。
心理テストは詳しい診断資料が必要な場合に行われます。また、医療機関によってはアルコール依存症や痴呆などに対応する専門のデイケアやホスピスを設置しているところもあり、そこもカウンセラーの活躍の場になっています。
医療機関で臨床心理に関わって働く人は、カウンセラーも含めて4000〜5000人程度とされており、非常勤の割合が多いといえます。
保健所や精神保健福祉センターは地域住民の心身の健康を管理し、住民の相談に応じる行政機関のひとつです。特に精神保健福祉センターは、精神面の相談や精神障害者の社会生活の支援を行っており、心理カウンセラーが必要とされている職場です。ここで相談業務に従事する職員は精神保健福祉相談員と呼ばれます。
また、児童相談所は子供の福利厚生を担当する行政機関のひとつで、子供の問題行動についての相談や調査、指導、子供の保護などを行っています。
ここでは子供や親との心理アセスメントやカウンセリングが重要視されており、ここでカウンセリング業務に従事する職員は心理判定員や指導員などと呼ばれます。最近は親による児童虐待の問題が増えており、深刻なケースを扱う事も多くなっています。
社会福祉法人や福祉事業を行っている団体、NPO法人なども、心理的支援を仕事とするカウンセラーを必要としています。しかし、民間の福祉施設で専属のカウンセラーをおいている事はほとんどなく、そこで働く職員にカウンセリングの技能が求められています。
これらの施設では、高齢者や障害者、社会的支援が必要な人に対して心理的ケア(カウンセリング・心理療法など)や身体的ケア(介護・看護など)を行っているほか、専門の相談窓口をおいている場合もあります。
これらの福祉施設では社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士などが活躍していますが、これらの資格と併せてカウンセラーの資格を持っているとより活躍の幅が広がるでしょう。
少年院や刑務所などの矯正施設で働く職種に、法務教官や心理技官(鑑別技官)、保護監察官などがあります。法務教官は対象者の指導と教育を担当し、保護監察官は出所後の生活指導を担当します。
一方、心理技官は心理学の専門職で、少年鑑別所での非行少年の鑑別や受刑者の調査、面接や心理療法を通じた矯正教育などを担当します。また、犯罪心理学や矯正教育の研究者としての役割も期待されています。
これらの職種はどれも法務省の職員であり、公務員試験の合格が必須となりますが、地位や収入は安定しているといえます。また心理技官には多くの研修機会があり、心理テストや心理療法を働きながら学ぶ事ができます。
教育機関におけるカウンセラーの活躍の場として、学校の学生相談室や教育委員会の教育相談室などがあります。これまで学生の相談には教師が対応してきましたが、最近ではいじめや非行、不登校などの問題が深刻化し、教師だけでは対応できなくなってきました。
そこで今、専門知識を持ったスクールカウンセラーに注目が集まっています。全国の各自治体では公立学校で働くスクールカウンセラーを募集する動きが広がっており、その応募資格は自治体によってさまざまです。しかし、時間給で複数の学校を掛け持ちする勤務も多く、職業としてはまだ安定していません。
スクールカウンセラーの仕事は1対1で相談を受けるばかりではない事が特徴で、生徒の問題はクラスやクラス担任、家庭などの問題でもあるため、生徒だけでなく先生や保護者からも相談を受けることが多くあります。
職場での能力主義の導入や人間関係、キャリアアップの必要性など、最近では職場でのストレスの問題が顕著になってきています。このような問題に対応するため、企業の中には社内に相談室を設けて社員のメンタルヘルスに配慮したり、職場の問題解決にあたったりしているところもあります。
このような事が背景となって、カウンセラーを社員として採用したり、外部から招いたりしている企業も増えてきています。人材採用にゆとりのない中小企業においては、人事担当者がカウンセラーを兼ねたり、社員の能力開発を支援したりしているところもあります。
このように企業で働くカウンセラーを大きく分けると、社員のメンタルヘルスに対応する場合と、社員の能力開発を支援する場合の2種類があります。
カウンセラーとしての経験を積んだ上で、独立してカウンセリングルームを開設するという道もあります。しかし、心理カウンセラーはまだ社会的な認知度が低く、独立開業しているカウンセラーも少ないため、開業時における統計的資料や開業マニュアル、経営モデルなどがありません。
そのため、開業には相当なリスクがあることを認識し、仕事が軌道に乗るまでの生活費や維持費も考慮に入れておかなければなりません。これまでの仕事で培った人脈を生かし、十分な計画と創意工夫を持つことが必要になるでしょう。
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