今日の日本では、社会不安や職場のストレスの増加、治安の悪化などによって、さまざまな場面で心理的支援の重要性が増してきています。心理カウンセラーは活躍する分野によって、心理療法士や心理職、相談員、心理判定員などと呼ばれていますが、代表的な職種として臨床心理士と産業カウンセラーがあります。これらの登録数は最近になって急増しており、今後もさらにカウンセラーの需要が高まっていくと予想されています。
心理カウンセラーはよく「心のお医者さん」と勘違いされる事がありますが、精神科医とは違うために「医療行為」を行うことはできません。重度のクライアントになると心の問題だけでなく身体の問題が関わっている場合もあり、心理カウンセラーが薬を処方する事もできません。そのため、心理カウンセラーが重度のクライアントを治療する場合には、一般的に精神科医や心療内科医などの医師と連携を図って対応していきます。
カウンセリングとは、クライアントの心の成長を促し、行動の変化や新しい可能性をもたらすものとされています。そのためには心理カウンセラーとクライアントがしっかりとしたコミュニケーションをとり、カウンセラーが一方的に考えを押し付けるのではなく、クライアント自らが変わるようにしていきます。
つまり心理カウンセラーはクライアントにとって「指導者」ではなく「支援者」なのです。カウンセリングの目的はクライアントの状況によって異なり、カウンセリングの種類を大きく分けると以下の4つになります。
カウンセリングの種類 | 目的 | 対象 |
---|---|---|
治療的なカウンセリング | 精神症状を軽減する | 精神疾患のある人や特定の精神的問題が大きい人 |
問題解決的なカウンセリング | 自覚的な問題を解決する | 判断力があり基本的に健康な人 |
予防的なカウンセリング | 心の健康管理を行ったり、ストレスなどの問題解決能力を高めたりする | 健康な人 |
開発的なカウンセリング | 自己実現や社会生活の一層の充実を図る | 健康な人で自己実現意欲の高い人 |
カウンセリングはクライアントとのコミュニケーションによって行われますが、一般的にはカウンセラーとクライアントが1対1で行います。しかし、問題の状況や必要に応じてグループや家族、カップルで面談を行うこともあります。
また、同じ悩みを持つ人たちが集まって集団でカウンセリングを受ける「グループカウンセリング」といった手法をとる事もあります。グループカウンセリングでは、その集団の作用によってカウンセリング効果を上げる事が期待されています。
参加者の種類 | カウンセリングの特徴 |
---|---|
個人 | 集中的にカウンセリングを行う事ができるが、問題の背後にある人間関係や組織まで対応することが難しい |
同じ悩みを持つグループ | カウンセラーの関与の仕方が難しいが、同じ悩みを持つ人同士が交流する事でカウンセリング効果を上げやすい |
家族やカップル | 周囲の人間関係がわかるので問題の原因を特定しやすいが、問題を引き起こした犯人探しにならないように注意しなければならない |
クライアントとのコミュニケーション方法は面談が基本ですが、必要に応じて電話やEメールなどを利用する事もあります。クライアントによっては面談よりも自由に話しができるという人もいるほか、緊急時の対応も可能になります。
コミュニケーションの種類 | カウンセリングの特徴 |
---|---|
対面によるカウンセリング | 直接クライアントと接する事で、表情や声の調子など表現すべてを判断してカウンセリングを行う事ができる |
電話によるカウンセリング | 緊急時でも対応しやすく、カウンセラーに直接会わないことでクライアントが自己開示しやすい |
Eメールによるカウンセリング | 双方が都合のよい時間に行えるため時間の制限がなくクライアントも自己開示が行いやすいが、カウンセリングが深まりにくく情報提供に終わりやすい |
カウンセラーのもとを訪れるクライアントは、悩む事で大きな壁にぶつかり自分のことで精一杯になっています。そのため、態度がわがままに見えたり、かたくなであったりして、なかなかカウンセラーの思うようにコミュニケーションがとれない事があります。
そのような時でも、クライアントの生き方や価値観を尊重し、クライアントを受け入れる姿勢が大切になります。カウンセラー自身と異なる価値観に出会っても、決してカウンセラーの考え方や価値観を押し付けてはいけません。
このような事から、カウンセラーに必要な資質は知識ばかりでなく、クライアントを理解する力、クライアントが変わるのを待つ忍耐力、クライアントを受け入れる包容力が重要といえます。
また、クライアントは人それぞれ異なるので、二度と同じカウンセリングはありません。そのため、カウンセリングごとに技術を学び続けるという向上心もカウンセラーには大切な資質となります。
求められる資質 | 内容 |
---|---|
包容力 | クライアントの価値観を否定することなく、カウンセラーとは異なるクライアントの生き方を受け入れ、クライアント本位に考えられること |
理解力 | クライアントの表情や態度に表れる心の内面に気がつき、クライアントの言葉の背景にある深い感情に共感し理解できること |
忍耐力 | クライアントが閉ざしている心が開かれるのを待ち、焦ることなく心の変化を待つことができること |
自制力 | カウンセラーとしてのプロ意識を持つことでカウンセリングに私情を持ち込まず、カウンセリングと私生活を混同してはならない |
向上心 | カウンセリングの方法が1つではない事を認識し、常に学習する事でカウンセリング技術を向上させる姿勢をもつ |
カウンセラーがクライアントから相談を受けカウンセリングを行っていく際には、カウンセラーに厳しい職業倫理が求められます。その中でも最も重要なのが「守秘義務」です。
クライアントはカウンセラーを信頼した上で、誰にも話せなかった事を打ち明けるようになります。クライアントから聞いた事を第三者に漏らすことはクライアントの信頼を裏切るばかりでなく、法律上の責任を問われる事にもなります。
また、当然のことですがカウンセリングで知った個人情報や秘密を漏らすことも許されません。ただし、クライアントが自殺を考えていたり他人を傷つける恐れがある場合などは、カウンセリングの中だけで対処するだけでなく、守秘義務を破らざるを得ないこともあります。
カウンセラーはクライアントの心の中に深く関わるため、クライアントとの関係が親密になりやすくなります。そのため、カウンセリングを仕事で行っている事をしっかり認識し、カウンセリングとカウンセラーの私生活をしっかり分けるようにしなければなりません。
これがしっかりできないとカウンセラーの倫理に反するだけでなく、後にトラブルを引き起こす原因になりかねません。
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