臨床心理士の仕事というと、心理カウンセラーとして働くイメージがあるかもしれませんが、多くは病院やクリニック、保健センターで働いています。臨床心理士全体で見ると、医療・保健領域で働く人は全体の4割にもなり、私設の心理カウンセラーとして働く人はごく少数となります。
医療分野で働く場合、その多くは精神科や心療内科での勤務となっていますが、心の病気を患っている人以外にも病気や怪我で苦しんでいる人はたくさんおり、それらの患者の心を支えるためにも臨床心理士は医療現場に欠かせない存在であると言えます。
医療・保健領域の中でも病院や診療所で働く人が最も多く、その割合は約80%となっています。
保健分野で働く場合、保健所や保健センター、精神保健福祉センターが主な勤務先となり、地域住民からの依存症やひきこもりなどの相談援助を行います。医療・保健分野での保健所、保健センター、精神保健福祉センターで働く人の割合は約16%となっています。
臨床心理士の勤務先として2番目に多いのが教育領域で、臨床心理士全体で見ると、教育領域で働く人は全体の2割を占めています。
近年、教育現場ではいじめや不登校、発達障害、児童虐待などの問題が大きく取り上げられており、スクールカウンセラーの存在が不可欠となっています。
スクールカウンセラーを配置する学校はこの20年間で急激に増えており、それに伴ってスクールカウンセラーとして働く臨床心理士の数も大きく増えています。
長らく心理分野の国家資格がなかったこともあり、臨床心理士を配置しなければならない制度などは存在していなかったことから、常勤で働く臨床心理士は少なく、複数の施設を非常勤で掛け持ちする場合が多くあります。
日本臨床心理士会が2012年に報告した動向調査によると、常勤のみが33.5%、常勤+非常勤が14.2%であり、2016年の報告では常勤のみが33.8%、常勤+非常勤が13.8%でした。このことから、常勤での採用枠がまだまだ少ないことがわかります。
ただし、一人あたりの勤務機関数は2012年に比べて2016年では12.5%上昇の48.4%となっており、勤務先を掛け持ちするケースが減っていると考えられます。
非常勤で勤務する臨床心理士で多いのがスクールカウンセラーです。スクールカウンセラーを導入する学校が非常に増加しましたが、週1回程度の勤務がほとんどであり、学校を掛け持ちするケースが多いと言えます。
臨床心理士の年収には非常にばらつきがあり、日本臨床心理士会が2016年に報告した動向調査によると、100万円未満の人もいれば、1000万円を超える人もいます。
これは臨床心理士の勤務形態に非常勤が多いことも原因として考えられ、勤務日数が4.5〜5.0日の人が36.8%いる一方で、0.5〜1.0日の人が9.9%、1.5〜2.0日の人が13.5%います。
2015年度の見込み年収(税込)は300万円台が最も多く、全体の19.0%となっています。次いで200万円台が16.5%、400万円台が15.5%、500万円台が9.3%となっています。
また、給与形態が時給制である人も多くおり、時給が5000〜6000円の人が12.4%で一番多くいる反面、1000〜2000円の人も12.3%います。このような極端なばらつきが出るのは、自治体派遣のスクールカウンセラーの時給設定が5000円台であることが理由であると言えます。
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