いじめや不登校、虐待、過労死など、現代社会にはさまざまな心の問題が存在しており、心理の専門家の必要性が認識されるようになってきました。
アメリカでは投薬による治療が臨床心理士に認められていますが、日本においては治療行為は医師にしか認められていないため、臨床心理士は対象者(以下、クライアント)に対し、心理学の知識や専門的な技法を用いて援助していく必要があります。
臨床心理士資格審査規定では「臨床心理士は、学校教育法に基づいた大学、大学院教育で得られる高度な心理学的知識と技能を用いて臨床心理査定、臨床心理面接、臨床心理的地域援助及びそれらの研究調査等の業務を行う」と明記されています。
ここで記載されている心理査定、心理面接、地域援助、研究活動が、臨床心理士が仕事をする上で必要とする専門技術となります。
心理査定は心理アセスメントとも言い、クライアントがどのような状況なのか、特性や問題点、課題を把握し、どのような方法で援助していけばよいのか、方向性を探っていきます。
クライアントから見ると「臨床心理士と面談している」状況ですが、臨床心理士はクライアントとの言葉のやりとりの中から必要な情報を聞き出して判断していきます。これを「心理査定」と言い、医師が病名を決める「診断」とは異なります。
クライアントが抱える課題や問題点を聞くのはもちろんのこと、クライアントを取り巻く人間関係や社会的状況、育ってきた環境などを聞き出していくことも大切です。
会話からわからない部分については、発達検査や知能検査、投影法などの心理テストを行って把握するほか、小さな子供であればおもちゃで遊ばせ、その子の行動を観察して心理状況を把握します。
心理面接はカウンセリングや心理療法などの技法を用いるものであり、クライアントを支援する上で欠かせない行為です。この心理面接は心理カウンセラーの仕事として想像されやすいのではないでしょうか。
この心理面接では臨床心理士がクライアントに対してアドバイスをするという訳ではなく、クライアントが話しやすい環境をつくり、対話を進める中でクライアント自身が自己理解、自己肯定、自己治癒ができるようにしていきます。
また、心理療法を行う場合はクライアント中心療法や認知行動療法、遊戯療法(プレイセラピー)、箱庭療法、芸術療法など、クライアントの状況に合わせて最適な手法を選択します。
臨床心理士の仕事は個人に対するカウンセリングのイメージが強いのですが、地域に関与することも期待されています。地域と聞くと市区町村などエリアを想像しますが、ここで言う「地域」とはエリアはもちろんのこと、家族や仲間、会社、学校、地域社会などのコミュニティも意味しています。
事件や事故が起きた場合、当事者はもちろんのこと、関係者や近隣の人の心のケアが必要になることもあります。また、クライアントを取り巻く環境に対しての働きかけが必要になる場合もあります。
そのため、メンタルヘルスの観点からコミュニティのコンサルテーションをしたり、心の問題が起こらないような予防活動を行ったり、情報提供を行ったりします。
臨床心理士の仕事は、その人の主観や勘で行うべきではなく、きちんとした根拠や理由に基づく必要があります。そして、そのようなクライアントに対して、どのような手法を使い、その結果どうなったのかをきちんと研究する必要があります。
この世に同じ人間はいませんが、事例を積み重ね、その結果を調査・研究することで、よりよい臨床心理活動につながっていきます。このことは自分の能力を高めるだけではなく、臨床心理士同士で知見を共有することにもつながります。
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