心理カウンセラーという職業は多くの人に知られていますが、心理カウンセラーという資格はなく、明確な定義もありません。近年さまざまな分野で心の問題が取り上げられるようになり、心の専門家が必要とされるようになってきました。
そのようなニーズに答えるため、日本心理臨床学会を中心とした日本国内に存在する16の心理学学会が共同でつくった資格が「臨床心理士」であり、1988年に誕生しました。また、1995年から公立小中学校にスクールカウンセラーが配置されましたが、その中核を担っているのが臨床心理士なのです。
臨床心理士は心理カウンセラーの中でも社会的認識と評価が高い資格で、心理職の採用基準として臨床心理士の名前がとりあげられる事があります。主に医療機関や大学・研究機関で仕事をしており、仕事内容としては臨床心理査定、臨床心理面接、臨床心理地域援助、臨床心理学的研究などがあります。
資格を取得するためには、第1種指定大学院の修士課程を修了して受験資格を得るか、第2種指定大学院を修了してから1年以上の心理臨床経験を積んで受験資格を得る必要があります。
指定大学院とは財団法人日本臨床心理士資格認定協議会が定めた基準を満たし、協議会の審査によって指定された大学院の事をいいます。指定大学院での学習課題は臨床心理士の職域に対応しており、それがそのまま試験内容に反映されています。
心の専門家と聞くと、多くの人が精神科医を想像します。では、精神科医と臨床心理士では何が違うのでしょうか。
決定的な違いは、精神科医が「治療」を行うのに対して、臨床心理士は「治療」を行いません。精神科医は心の病気を持った患者を診察し、必要に応じて薬物療法などの治療を行います。診察と治療は日本の法律で医師に認められた行為です。
一方、臨床心理士は心理査定、心理面接、地域援助、調査研究といった4つの専門技術を用いて相談者(クライアント)と向き合い、相談者の心の問題が解決や改善するように努めます。
つまり、臨床心理士は相談者を患者として扱うのではなく、相談者が「その人らしく」生活ができるようサポートする専門職であると言えます。もちろん、精神科医による治療が必要な場合は精神科医と連携を取りながら問題の解決に当たります。
臨床心理士に限ったことではありませんが、クライアントの心の問題に向き合って改善に向かわせるためには、まず第一にクライアントとの信頼関係を構築し、心の状態を把握しなければなりません。
その過程でクライアントのさまざまな情報を知り得ることになりますので、臨床心理士には高い倫理観が求められるのはもちろんのこと、クライアントに関する秘密保持の義務が発生します。
これらのことは日本臨床心理士資格認定協会が定めた「臨床心理士倫理網領」に記載されており、倫理網領に違反した場合には登録停止や末梢などの厳しい処分がされることもあります。
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